音読療法士で現代朗読家の野々宮です。

承前。

ある日、知人から突然の電話。

切羽詰まったパニック状態からのヘルプコールでした。

今すぐ電話でできることって……そばにいた水城ファウンダーがすかさず「お経朗読(音読エチュードのひとつ)だっ」。

パニックになると、息を吐くことが怖くなります。吐けば息は入ってくるのですが「息を吐いて」と言っても吐けません。そこで、音読。気づけば呼吸できています。やがてパニックも収束します。

誘導して、息継ぎのタイミングをだんだん先延ばしにしていきます。数行を息継ぎなしで読みきってもらい、励ましてさらに数行、を繰り返していると、ぽろりと「あれっ、私なにやってんの?」。戻ってきたのです。

音読療法の実用性をまざまざと見た瞬間でした。

……それで十分納得したのに、やらかしました。たまたま出張先のホテルで暇だったので思いついてしまったのです。一人っきりだというのにバカだった。

試しに息を浅くはっはっはっと吸っていたら、本当にパニック状態に! まじで息が吐けない。わかってるのに吐けない。怖いよ! 良い子は絶対に真似をしないように!

さすがに焦りました。でもそもそもが「試しに」ですから、次に何をやるかはわかっています。「吾輩は猫である」の冒頭部分の覚えている限りの文章をひたすら繰り返し「お経朗読」しました。「わがはいはねこであるなまえはまだないどこでうまれたかとんとけんとうがつかぬなんでも(忘れた)わがはいはねこである……」

音読療法はめっちゃ効く! と今度は自分の体で強く強く実感しました。以来、なんでもいいから暗唱のためのフレーズを覚えておくべし、と強くおすすめしております。意味に引きずられにくいもの、ただただ美しい文章などは向いているのではないでしょうか。「春はあけぼの(枕草子)」や「祇園精舎の鐘の声(平家物語)」、「時は春、日はあした、あしたは七時(ブラウニング「春の朝」)などとってもよさげ。いずれも現代朗読協会の「音読群読エチュード」に掲載されています(とさりげなく宣伝)。

ま、これは音読を通じて呼吸をするという事例ですが、本当に「呼吸しかできない」という状況があるのだなと感じることがありました。

この項まだ続く。

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