日々、粛々とこなすひとつひとつの中に、”それ”が詰まっている。
こなすさなか、”それ”に気づく事ができれば、筋肉は十分な密度で引き締まり軽いままそこにあって、関節は滑らかに躍動する。関節の角度が1度、また1度と変化するたびに、濃密な調べを聴かせる。
“それ”は、この空気の中にさえ詰まっている。
空気中を満たした”それ”に気づく事ができれば、空気は、N2とO2の塊という記号による認識を超えて、命あるものと呼ばれるものたちと同等に、共に在り、透明な弾力で弾き返す。弾力に皮膚が気づいた時、皮膚と空気が手を取り合う。前に歩きながら、後ろへ向かう力を感じる。N2とO2の塊は、透明な弾力をもつ肉の塊であり、官能と言えるほどの艶で皮膚に触れる。
“それ”は、この空の向こうまで、どこまでも世界を満たしている。
誰であれ”それ”を持ち、どこまでも”それ”は続いている。